- 舌の痛み(舌痛症)
- 原因のわからない舌の痛みが続く。舌の一部分がピリピリ、ヒリヒリ痛む。痺れたような感覚がある。舌を動かすのは問題ない。触っても痛くない、食事は問題なく食べられる。病院で検査をするが異常はない。
主訴
舌の左側面の違和感(常に触れている、ピリピリする)
その他症状
頸、肩のこり、耳鳴り、冷え性、下腿のこむら返り。既往歴急性腰痛、腰部椎間板ヘルニア。
所見触っても痛みが増すわけではなく、舌の動きも問題ない。味覚障害なし。病院で脳検査をするも問題なし。病院では原因不明といわれる。
ツボ、筋肉頸部夾脊、天柱、風池、完骨、百会。中斜角筋、後斜角筋、頭板状筋、頸板状筋、後頭下筋。
治療
1回目の治療では、頸や肩のこりの緩和に重点をおいて治療。
2回目の治療、1回目の治療で舌の感覚に変化がみられなかったので、下顎神経への刺激を行うため、下関穴(頬の骨のあるすぐ下)への深刺をする。
3回目の治療、舌の違和感はほとんどなくなったので、頸、肩こりの治療をして終了する。
考察鍼灸の臨床現場にいると、このような西洋医学では原因不明といわれる症状に遭遇することは少なくない。ただ、所謂東洋医学的な気の流れや、臓腑の問題に当てはめなくても、解剖学的に考察してみると、解決することがあります。
今回のような舌の感覚(触れる、痛み、温冷)は、脳神経の三叉神経の枝である下顎神経(舌神経)が司っています。その他の味覚は舌咽神経、舌の運動は舌下神経となっているので、三叉神経の枝である下顎神経(舌神経)に関連する障害と考えることができます。
実際に、味覚に問題はないし、舌を動かしてもらいましたが何ら問題ありませんでした。また、来院前に病院でCT検査を受けて脳に異常はなかったということで、脳からの影響は除外できます。
また、この方のしゃべり方が他の方と比べ、口を開けて話すようなじゃべり方ではなかったので、咀嚼筋の緊張が関連しているのではないかと考えました。咀嚼筋は舌の感覚を司る下顎神経と同じ神経の神経支配を受けていますので、筋肉の緊張が神経に影響を与えて、今回の症状になったということが十分に考えられます。
全ての舌痛症や舌の違和感に対して、このやり方が有効とは思いませんが、舌神経の障害、或いは咀嚼筋の緊張でこういった症状が出る場合もあります。また、今回の患者さんは、病院での検査をやっているので、重篤な疾患を除外できています。病院と鍼灸院をうまく使い分けて利用できれば、患者さんにとっても不安なく、最短で症状の改善に向かっていけるのではないでしょうか。
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