2012年8月6日月曜日

野球肩

繰り返す投球動作によって、肩関節を構成する、筋肉、軟骨、関節包に炎症や損傷が出て、痛みが生じる障害の総称です。

野球に限らず、バレーやテニス、水泳などの肩を動かす競技でもみられます。

原因は、
①投げすぎ、使い過ぎ(オーバーユース)
②正しくないフォームや動作
③筋力不足

によります。

①投げすぎ、使い過ぎ(オーバーユース)
どっからが投げすぎやねん?って話ですが、日本臨床スポーツ医学会によると。

全力投球で
小学生・・・50球以内/日     試合を含めて200球以内/週
中学生・・・70球以内/日     試合を含めて350球以内/週
高校生・・・100球以内/日    試合を含めて500球以内/週

としています。

これを見てどう思います?野球をやっていない人はピンとこないかもしれませんが、経験者の方は大変やなと思ったと思います。高校生で単純に、バッター一人に5球として、三人で15球。だいたい7回くらいです。
当然、ボールも投げますし、ファールも打たれる、ファーボールもあるし、ヒットもあります。よっぽどいいピッチングしないと、こういうわけにはいきません。
ちなみに、野球肩、肘になるのが多いポジションは、ピッチャーとキャッチャーです。この二つのポジションは他のポジションと比べて、圧倒的に投球数が多いからですね。

最近でこそ、投球数を言うようになってきましたが、数年前まではプロでも言っていませんでした。日本の高校野球では100球を越えることはざらですし、連投もざらです。当然肩に負担がかかります。

②正しくないフォームや動作
どのフォームが正しいかというのが難しいので、正確に言うとその人に合ったフォームや動作をしているかどうかですね。投げる動作といっても、単純に肩を回して投げればいいかというとそういうわけにはいきません。
より速く、強く、遠くに投げないといけないので、肩以外の足、お尻、腰、背中、首、腕、指など、ありとあらゆる部位を駆使して投げます。筋肉をただ使うだけでなく、体を捻ったり、ためを作ったりして、効率よく、全部を使い、自分に合ったフォームで投げれば、速く、強く、遠くに投げれるわけです。

フォームが悪いと、体のどこかに負担がきます、肘や肩、腰、股関節など、一番不安定な関節に影響が出ます。さらに投げる動作なので、肩や肘に負担がくるわけです。
肩といのは、球関節といって、可動範囲が広い関節です。そして、たくさんの筋肉で構成されています。なんでもそうですが、パーツが多く、精密で、高度な動きをするものというのは、壊れやすいものです。人間の体も一緒なわけです。

③筋力不足
筋力が弱く、骨の成長途中の学童期の子供の投げすぎ、やりすぎは肩や肘、腰など多くの部位に負担になります。筋肉というのは、ほとんどが関節をまたぎ、骨に付着しています。筋肉を収縮、弛緩することにより、関節の曲げ伸ばしを行います。②で述べたように、より速く、強く、遠くに投げるためには、筋力が必要になります。フォームや柔軟性など、様々な要素がありますが、筋力もないと速く、強く、遠くに投げれません。

筋肉というのは、筋線維の束でできています。筋力が弱いということは、筋線維が少なく束も細いということです。何もやっていない人が、急にダッシュしたり、大きな負荷がかかると、肉離れを起こしたり、筋肉痛になります。投球動作でも同じで、急に投げたり、筋力がないのに、長時間使うと、筋線維の断裂や損傷が起こったり、支えきれなくなり痛みが発生したりします。
同じ動作をして、同じ場所に負担をかけていると、体は悲鳴を上げてしまいます。関節の軟骨が損傷したり、筋肉の腱は摩耗して損傷したりします。

他にも柔軟性や、ウオーミングアップやクールダウン不足、幼い頃から同一種目を長く続ける、指導者の障害に対する認識不足など、いろいろなことが考えられますが、上の3つが大きく関わっています。

今でこそ、投球数やスポーツ障害について、広く知られるようになってきましたが、僕らが小学生のころは、野球のうまくなりかたや練習方法は教えてもらえても、痛みが出たり、ケガした時にどうするかなどは、知られていなかったように思います。

自分自身野球をやっていましたが、投げ方も悪かったんでしょうね。小学生の時点ですでに肩に痛みはありましたからね。痛みあっても言いませんでした、レギュラー外されたくないですし、練習休むのも嫌でしたからね。腰もこの時から痛みがありましたんで、教科書通りに体を痛めているって感じですね。(笑)

日本の野球人口は多いですし、僕らの小さい時は、運動のできる男はみんな野球をやっていました。だた、こういったスポーツ障害に関しての知識や、取り組み方などを知らなかったたために、多くの才能ある人が野球を辞めていったと思います。
嫌な思いをして辞めないですむようにしたいですね。

小さい子供じゃなく成人でなる場合は、筋力の低下(肩関節周囲、下半身の筋力低下による手投げ、肩関節への負担)、ウォーミングアップ、クールダウン不足、使い過ぎによる筋肉や腱の損傷や疲労などが考えられます。

例えば、高校時代に野球をやっていて、久しぶりに野球をやるとします。
部活などでやっていた時は、十分なウォーミングアップをして、野球をしますが、草野球などでやる場合は、十分なウォーミングアップができません。時間と場所がないのと、指導者などがいないので、甘えもあり、とくに気にせずやってしまいます。さらに、運動不足で体は柔軟性をかき、筋力も低下しています。

だがしかし、心は高校球児のままです。やり出したら、全力投球です。久しぶりにやるので、とことんやってしまいます。その後はクールダウンもせず、飲み会です。

当然、負担になっていますよね。プロは、アイシングをしたり、トレーナーさんにストレッチをしてもらったり、マッサージをしてもらったり、はたまた鍼をしてもらったりしているのに、筋力も柔軟性も落ちている普通の人が、何もせず飲み会です。(笑)むしろ普通の人のほうが、クールダウンやストレッチ、マッサージなどが必要なんですけどね。

そんな感じで一気にやられてしまいます。

で野球肩の人の治療なのですが、治療院に来るころには時すでに遅しという方がほとんどです。
何でかというと、先にも言いましたが、少々の痛みの場合、ほとんどの人が我慢してプレーを続けます。日常生活に支障ありませんし、野球をしなければ痛みは出ないし、休めば痛みも治まることが多いためです。

痛みがあってもなんとかできるし、休めば痛みは緩和されるし、なんとかなるでしょという感じですね。

それを繰り返すうちに、投げるのがきつくなってきたり、痛みがなかなかひかなくなってきたり、日常生活の動作でも痛みが出たり、ひどくなってきます。
今までは、全力で投げた時に痛みが出ていたのが、軽くキャッチボールでも違和感がでてくる。いよいよヤバいな~ということで、医療機関にかかります。

初期の痛みってのは、負担が増えて、筋肉や腱に軽く炎症が出ている程度です。なので、休めば痛みも引きます。体が警告を鳴らしてくれているわけなので、この時点で対処しないといけないわけです。この時点での来院はまずないですね。(笑)

使い過ぎ?フォーム?筋力不足?早めに対処です。

痛みが出た場合、安静にし、治療しなければ、絶対に治りません。たまに、痛みがあっても運動を続ければ、痛みがとれるという方がいますが、まず治りません。一時的に緩和されたとしても、そのまま悪い方向に進行します。

スポーツをする方というのは、安静という言葉が嫌いなんです。じっとしてれないから、スポーツをするので、それを止めろと言っても受け入れられないんです。

治療に来たがおっしゃるのは、安静が嫌やから、治療に来たんです。治してください。

というわけです。

もちろん何とかなる場合もあるんですけどね。こういった状況で鍼灸でできる範囲というのは、痛みの緩和と筋緊張の緩和です。
・炎症が出ている部分の消炎鎮痛
・肩関節可動域がタイトになっている部分を広げる

実際にどこにアプローチするかというと、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、上腕二頭筋腱です。腱や靭帯、軟骨への損傷があればむずかしいので、必ずスポーツ整形で、MRIを撮ってもらって、診てもらった方がいいですね。そういった損傷がない場合は痛みもとれることがありますが、何度も言いますが、痛みが緩和されても、上の原因3つをしっかり対処しないと、同じことの繰り返しになりますので、注意が必要です。

最後に野球肩の対処ですが、
・痛みが出た時点で、上の原因①②③を見直す。
・スポーツ整形を受診、適切な診断をしてもらう。
・早めに治療をする。整形外科、鍼灸院、整骨院。
・安静!!!迷わず休む。

20年前の自分に言ってやりたいですね~。



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