鍼治療をすると、気持ち悪くなることがあります。
緊張、ストレス、寝不足、疲労、強い痛み、排泄、腹部内臓疾患などによる刺激により、脳血管を刺激して、心拍数の低下、血管の拡張、血圧低下を起こします。
その結果、気持ち悪くなったり、血の気が引いてきたり、眩暈がしたり、頭痛がしたりといった症状が出てくる場合があります。
これを、血管迷走神経反射といいます。
鍼治療に来られる方は、体に鍼を刺されるということで、極度に緊張している方や、もともと痛みや辛さがあって、満足に睡眠も取れず疲労している方もいますので、こういった反応が出る方もいます。
予防策としては、
問診での聴き取り。
話し方やその人の雰囲気
コミュニケーション
刺激量の調整
こういったところでしょうか。
皆さんにこういった反応が出るわけではありませんが、新患の方には事前にこういった反応がでますよというのを説明するようにしています。
何の説明もなく、こういった症状が出たら、びっくりしますよね。鍼によって悪くなったのではないか、鍼を刺したから、ずっとこういった症状になるのではないかと、いろいろなマイナスのイメージが膨らんでしまいますからね。
もし、こういった状態になっても、鍼を抜いてリラックスして寝ていれば、回復してゆきます。
前置きは長くなりましたが、吐き気が主訴の患者さんがいらっしゃいまして、いろいろなところで診てもらい、胃下垂が原因なのではないかとということで、他の北京堂で治療を受けたそうです。
北京堂の胃下垂治療というと、胃への直接刺激や、胃の挙上治療を行い、自律神経の調整として頸部や背部の刺鍼治療となります。
その方によると、胃下垂の治療よりも、自律神経の調整として行った背部や頸部の治療のほうが効果があったそうです。この方は、もともと頚椎症も患っていて、普段から頸部の負担も大きいんです。
さて、頸や背中の治療をして、どうして吐き気がおさまったのかというと、頸の側面には先ほど説明していた迷走神経が通っています。頸への負担で頸部の緊張が続き、迷走神経を継続的に刺激をしていたために、迷走神経反射が起こり、吐き気を催していたのではないかと考えられるわけです。
てんかんの治療で、この迷走神経にパルスジェネレーターを埋め込み、継続して電気刺激を行うものがあります。この副作用でも、吐き気を催すということが書かれていますので、今回の件も納得がいくものです。
迷走神経反射を知っていても、つい姿勢や筋肉、症状に目が行きがちになります。改めていろんな角度で考えないといかんな~と納得のいく症例でした。