2017年10月20日金曜日

興味深い

縁あって精神科医とお話しをする機会がありました。


精神科医は、腰痛の患者さんに抗うつ薬を処方することはありません。


こんなことをおっしゃっていました。抗うつ薬。一般の方にはなじみのない薬かもしれません。字の如く鬱の方に処方される薬です。

鬱の症状の方は、脳内で分泌されるセロトニンやノルアドレナリンが低下するといわれています。脳内では、低下を補うためにセロトニンやノルアドレナリンを再分泌されるのですが、分泌されるとそれらの分泌物を取り込むレセプターにより、さらに吸収されてしまうという悪循環に陥ります。出しても吸収されてしまうなら、分泌をやめてしまえ…

それによって、どんどん気分が落ちこんでいってしまうということになります。

抗うつ薬は、レセプターによって分泌物が吸収されることを防ぎ、脳内にセロトニンやノルアドレナリンを留まりやすくする薬となります。

最近、慢性の痛み、慢性の腰痛や坐骨神経痛などの患者さんにも、抗うつ薬が処方されるようになってきました。

このセロトニンやノルアドレナリン(抑制性と興奮性の違い、分泌されるところが脳内でも違うので、同じで扱うのは微妙なのですが、詳しく書くとややこしくなるので割愛します)は、気分の落ち込みと関係するだけでなく、痛みの抑制にも働きます。
つまり慢性痛の患者さんは、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの量が少ないから、痛みを感じてしまう。だったら、セロトニンやノルアドレナリンの量を増やしましょう。

といった理由で、処方されるようになったということです。

セロトニンの低下で、腰痛がひどくなるのか…長引くのか…。それ以外でもやれることがあるのではないか。選択肢の一つとしてはいいかもしれません。実際に精神的な部分を伴う方には有効かもしれません。

例えばセロトニンの吸収を抑えるだけの薬、ノルアドレナリンの吸収を抑えるだけの薬、両方の吸収を抑えるだけの薬もあります。当然ですが、全てにこれらの薬が当てはまらないとおっしゃっていました。あくまでも、ラットによる実験によるデータで、それが人間にそのまま当てはまるかというと、疑問があるという見解でした。

つまり、痛みが長引いている、だから抗うつ薬を処方というのは、どうなんだ?ということになります。


実際に、精神疾患で入院患者さんを診ている先生は、そういった薬を患者さんに実際に処方されています。入院患者さんですから、腰や背中も痛くなるのかもしれません。

上の理屈が正しければ、そういった患者さんの痛みも良くなるということになりますが、そうではないのを日常で経験されているから、冒頭のお言葉になったのかもしれません。

人間の体は、複雑です。複雑な感情とも連動します。ラットにはない感情です。データ通り、教科書通りにはいかないこともあります。

改めて、症状だけでなく、人を診る大切さを実感した気がします。


大阪吹田-江坂駅の鍼灸院
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